珈琲業界に影響を与える12人の連載コラム第三弾 Coffee Fest World Championship Tokyo 初代チャンピオン 山口 淳一氏 前編 「ラテアートの魅力」

【山口 淳一氏プロフィール】

2014年に開催された、Coffee Fest World Championship Tokyoの初代チャンピオン。同年、京都にオープンした%Arabicaの立ち上げから携わり、Global Head Baristaとして世界25カ国以上を旅しながら、海外フランチャイズの30店舗以上の立ち上げに携わる。
2019年に独立し、京都にコーヒーとカヌレの専門店、here Kyotoをオープン。独自のアプローチで日本、世界にコーヒーの素晴らしさを広めている。

ラテアートの魅力

私にとってラテアートの魅力とは、オーダーされた目の前のお客様だけではなく、その周りにいる友達やSNSにアップされた写真をみた方々など、1杯のラテアートには沢山の笑顔を生み出す魅力があると思っています。 沢山笑顔があるところ=平和だと思いますので、大袈裟ですがラテアートには世界を平和にする力が僅かながらもあると思っています。

私は28歳になるまでコーヒーに全く関わらない人生を歩んできましたが、 ネットサーフィン中にふと目に留まったデザインカプチーノにはアニメキャラクターが描かれており、本物と瓜二つの出来映えに驚愕しました。
同時に自分もデザインカプチーノを描けるようになりたい!という強い気持ちが芽生えました。 デザインカプチーノとはピック等を使用し、カプチーノに絵を描くことですが、 エスプレッソマシンや、その他にも数種類の器具が必要なため、インターネットで情報収集を行い、自宅にホームエスプレッソマシンを設置して練習をスタートしました。練習開始から数ヶ月後、何とかデザインカプチーノの土台となる「白い丸」が描けるようになりましたが、私は元来絵を描くのが苦手だったことも関係し、その後は全く上達しない自分にいら立ちを覚えました。その際に偶然にも見つけられたのが、現在得意とする「フリーポア ラテアート」でした。
「フリーポア ラテアート」とは、カフェラテを作る際にエスプレッソへ注いだミルクの対流を使って描くアートの事。

絵心のない私でもこれならできるのではないかと思い、すぐに転向しました。 しかし、フリーポアラテアートは想像を遥かに超えるほど難しく、無知の素人が見よう見まねで出来るはずもなく失敗の連続。
超がつくほどの負けず嫌いな上、ハマったら極めるまで突き詰める性格の私にとって失敗の連続は許容できず、より一層練習にのめり込んでいきました。
周りにコーヒー関係者の知り合いがいなかったため、独学でエスプレッソの抽出やスチームミルクの作り方、ピッチャーの振り方を研究しました。
ラテアート練習時には動画を撮って、上手な人と自分は何が違うのか、どうすればもっと綺麗に描けるのかを研究し、トライアンドエラーを繰り返しました。今思えば、これほどの時間とお金を費やした期間は、今までの私の人生ではなかったと思います。

練習を行えば必然的に出来上がったコーヒーを飲まなければならないため、最初は仕方なく飲んでいましたが、徐々に慣れてきたのか美味しいかもと感じるようになっていました。
また、一人では消費しきれない大量のカフェラテを家族や友人にも配りはじめたら、想像していた以上に皆が喜んでくれて、コーヒー1杯で人をこんなに笑顔にする事ができるのかと感動し、人のためにコーヒーを作る事が楽しいと感じるようになりました。
コーヒーを美味しく感じる時は、単純にラテアートがうまく描けた時だけではなく、エスプレッソとミルクのスチーミングがうまくできた時だという事に気づき出し、ラテアートを綺麗に描くだけではなく、美味しいコーヒーを作るためにはどうすれば良いかを考えるようになりました。

そして、32歳で東京に上京し本格的にバリスタデビューしてからというもの、毎朝オープン前の誰もいない店でマシン練習を2時間、夜は動画や本で知識をつける毎日でした。
2014年のラテアート世界チャンピオンになれたのも、自分ができる最大限の努力を日々継続したことは当然ですが、運にも恵まれたからだと思っています。

世界チャンピオンになってからは、世界中のコーヒーに携わる人や、業界以外の人たち達とも関わる場が増え、その土地の文化や食に触れるという素晴らしい経験をさせてもらいました。そのおかげでラテアートチャンピオンは単なる通過点だと思うようになり、現状に満足せず更なる向上を目指しました。



コーヒーはスパイス『後編』はこちら